心に残る絵本
趣味は何かと聞かれると、「読書」と迷わず言えた期間がだいぶありました。好きな作家の本は何冊も集中して読み、本屋で本を探し、その本がある間は読む楽しみがあるので幸せでした。
その頃から絵本も読んでいました。本を読んでも何になるのか、と思った事もありましたが、読み返しやすい絵本は、年を重ねると別の受け取り方があるように思えてきました。絵本は内容だけではなく、絵も重要な要素になってきます。好きな歌の歌詞が気になるように一対をなしているように思います。
「百まいのきもの」 (ここ)は、心に残る一冊です。
<ワンダ・ベトロンスキーという変わった名前のその子は、だれも友達がいなく、いつもはげちょろの青いきものを着ています。その子が、クラス一の人気者ペギーとその友人マディーに「家に100まい服を持っていてならべてある」と言った事から、ワンダをからかうようになります。>
ワンダの家は貧しく、とても100枚も服があるとは思えないのですが、ワンダの家には100枚の服が本当にあったのです。昔ははかなげなタッチの絵とともに、悲しいお話の様に思っていました。でも、最近読み返してみて、弱い人がいていじめられていたら助けてあげるような善人のペギーやマディーが、段々一人ぼっちのワンダを困らせるだけでなくいじめていってしまう様子が実によく書かれています。子供にも、そして目に見えるものに注意を奪われ、想像力を失くした大人にも読んで欲しい絵本です。
「りゅうになりたかったへび」 (ここ)は、結婚を控えたカップルに送りたい絵本です。貧しい小さいおじいさんと小さいおばあさんが仲良く暮らしているほほえましい話です。りゅうになりたいために修行していたへびをおじいさんが怒らせた事から災難がやってくるのですが、ここに出てくるおばあさんが実に可愛らしいのです。すごい知恵がある訳でも、力がある訳でもないのですが、へびはおばあさんに振り回され、ついにはおばあさんはへびからおじいさんを助け出し、ハッピーエンドで物語は終わります。色んな誘惑にフラフラしながらおじいさんを想う可愛らしいおばあさんは、丸木俊さんの独特の絵とともに心に残る絵本です。おばあさんを想うやさしいおじいさんと、チョコレートボンボンが大好きな可愛いおばあさんの夫婦は老後のほのかな希望の様に思えます。
「からすたろう」 (ここ)は、いじめや教育の大切さを教える絵本です。子どもたちや教育関係に携わる人には読んでもらいたい本です。初めて本を手にする時は絵の印象が強いと思うのですが、「からすたろう」は、その独特の絵の雰囲気から初めためらってしまいました。でも、ちびと呼ばれたクラスの男の子が新しく来た先生に、自分の才能を育ててもらい周囲に理解してもらう内容は感動を呼びます。残念な事は「クロウ・ボーイ」という題でアメリカでは広く知られているのに、日本ではそれほど知られていない事です。教育というのは銅を金にするような錬金術ではなく、その人が持っている可能性を引き出す事なんだ、という当たり前だけど難しい事を分かりやすく教えてくれます。
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コメント
子ども達が成長して、ひさしく絵本から遠ざかってますが今日は素敵な絵本の紹介有難う御座います。
特に「からすたろう」は、大人の私たちにも通じるテーマで素晴らしい絵本ですネ!
個性的な絵ですが、作者には大人も対象の意図があったのでは?・・・
早速、娘にも紹介したいと思います。
投稿: 花舞 | 2009年3月29日 (日) 09時24分
花舞さん
中身の深い絵本は一杯あると思います。
そして、その本を思い出す時、そこに描かれていた絵も
きっと思い出す事と思います。
松岡享子さんは著書「サンタクロースの部屋」(こぐま社)で
<サンタクロースの部屋>、それはサンタクロースの存在を
信じる子どもの心の中の空間。この空間は、子どもが楽しく本を読むのに不可欠であり、子どもが成長する上で大きな力となる・・・と言っています。
是非お嬢さんには
その空間を育てられる先生になって頂きたいです。
投稿: エムズのひとり言 | 2009年3月29日 (日) 16時57分